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対談 ああ言えば、こう笑う
     小山利枝子 × 石川利江
2001.2

今回初めて会報をお届けします…。
石川 前から念願の会報を、会員の皆様に初めてお届けすることができそうです。この小さなメディアを通 して、皆様と一緒に文化やアートが社会にどのような影響を与えられるのか、アートがどんな力を持つのか、そんなことを考える場にできたらと思っています。それからもちろん小山情報も!
小山 そ うですね、会員の方々に私の作品を見ていただき、またご支援もお願いしたいと思いますが(笑)、それにとどまらず、この会が、新しい表現や、わくわくする ような芸術の表現に対する感動を共有できる人たちの場になっていけばと思っています。その中から作品に対しての理解やサジェスチョンをいただけるように思 えますし、そんな広がりのある会にしていきたいと考えています。このように会報を出していくことも、その第一歩になるのではと思っています。
石川   パーティーなどで直接お会いしてお話しをするというのもいいと思いますが、小山さんが今、どんなことを考えているのか、また会員の方々のアートに関するお 考えや情報などお寄せいただいて、会報というかたちで皆様にお伝えして行きたいと思います。お互いに刺激になるようなものを作っていきたいと、夢は広がる のですが…‥・。(笑)
小山  文化・芸術全般に関してマニアチックではなくて、自由に情報交換できる場になればいいですね。
石川   芸術家は常に新しく表現方法を探していく部分があって、いろいろなものを吸収して変わっていくのだと思います。小山さんが出会った作品や感じたことをメッ セージとしてお伝えしていくことも、小山さんの作品を見る上で、アーティストの秘密に迫る(笑)というか、楽しいことだと思います。
小山   私自身がより大きく成長したいという気持ちや、また作品も転機を迎えているという気持ちもあってこのところ、かなり多くの展覧会を見ています。昨年印象的 なものだけでも、版画の駒井哲郎展、マティス展、京都で伊藤若沖展、などかなりありますね。そこで、感じたり考えたことも多くあっても、時間とともに忘れ てしまうことが多いのですが、会員の皆様にお伝えすることで、私自身の中に言語化して明確にしていく作業としても、とても意味があることと感じています。
石川   感じていることを、言語化することで、自分に対して深く楔を打ちこんで行くことができると思います。私も演劇などを見た時、いろんな思いやビジョンが湧い てくるのですが、書きとめておかないと忘れてしまうのですね。メモでもいいから書きとめておくという行為は自分の精神に対しても意味があると思います。ま あ、私の場合、単に物忘れ領域が広がっていることへの恐怖もあるのですが。(笑)
 会員の皆様にもどしどし発信していただき、おやっと思っていただける読んで面 白い会報にしていきたいと思っています。
小山  広がりのある、私的であってもある種普遍的な情報であり、何に対しても開かれた会や会報にしていきたいですね。

アートの力って一一一。
石川   芸術文化に関わる人間が、基本的になぜ自分は表現していくのか、わたしのようなコーディネーターも一体どういうものを世に出していきたいのか、きちっと問 われる時代だと思います。アートと社会の関係、経済活動としてのアート(笑)、など考えたいことはいっぱいあるのですが、今のままでは文化・芸術というも のが社会の中で、何だかあぶくのような、あくまでも特殊なものになってしまうような気がします。
小山  一般的な認識では芸術的行為や作品は、人間や社会にとって本当に必要なものではなくて、ちょっとした贅沢品というか、生活の彩 りというような感じだと思うのです。でも、本当はアートは本質的に必要なものなのです、といい切りたいと思います。(笑)
石川   以前、オノ・ヨーコが同じことをいっていました。「(皆さんは)人間にとってアートはあってもなくても同じように思っているかもしれませんが、そうではな く、絶対に必要なものなのです…」と。また、横尾忠則も、「アートは自分を壊してくれるもの。たとえば、ピカソはそういうものを持っているけれども、モネ は美しいけれども、じぶんの世界を壊してくれない。」と、いうようなことをいっていました。何かが壊されるということは単に壊されるだけでなくて、そこか ら新しく生きていく力をもらうんですね。
小山   それは、ある種自分をスポイルしているものを取り去ってくれると言うことで、本当に破壊するということとは、ちょっと違うと思うのです。自分を縛っている ものから自分を解き放ってくれる、それが、アートなんですね。しかし、そのためには、アーティストにかなりの力がないと出来ないことなのですね。とかく一 見すると拒否反応を引き起こしてしまうような、前衛的な表現といわれるものは、表現者として見ると、常に自分を開放して、破壊して、停滞しないようにして いくことだと思うのです。若い時は、無意識の内に時代に共振して、少ない刺激でも脱皮していけるのですが、年齢を重ねると意識的にその行為をしていかない と自分自身が変わっていかないと思います。常に出会いを求めて心を開放しないと変わることができない。
石川   中々深いお言葉ですね。(笑)最近は、誰もが表現可能なように見える時代になってきていますが、本当は表現していくことは、大変つらい行為なのですね。表 現者の自分を追い詰めていく行為、そういった部分があるから、普段ぶらぶらしていても(笑)、世の中の人に尊敬されたり、愛されたりする部分があると思う のです。アーティストもある種の十字架を背負った人々だと思うんです。それがあるから人を感動させたり出来るのだと思います。
小山  十字架につぶされないように、崖から落ちない程度に崖っぷちを歩いていきたいと思います。(笑)


石川利江
ISHIKAWA地域文化企画室、ギャラリー 座 h・art(アッシュアール)主催
小山利枝子絵画館友の会事務局