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statement 「彼女たちが創る理由」 出品によせて
2002.9 
小山利枝子

信濃美術館「彼女たちが創る理由」会場風景
 私は絵画に魅入られている。内的ビジョンを絵画にする行為を繰り返し、状況が許す限り今後も続けて行くだろう。私に与えられた残りの時間がどれくらいあ るのかわからないが、それでは到底表現しきれないイメージが私の内側に満ちている。一点制作すると更にそのイメージは膨らみ、あるいは別 のイメージを生んでいく。だから限りがない。

 現実の時間を身体という限定のなかで社会の制度に縛られて不自由に生きている自分が、同時に、想像の世界では宇宙の果 てまで瞬時に移動する事ができる。絵画は、プリミティブでシンプルな表現方法でありながら、それゆえに、そのように生きる二つの次元を同時に表現出来るメディアであると感じている。

 ところで、私の内的ビジョンは、私の外側の世界と通じており、当然それに大きく影響され、あたかも万華鏡のように姿を変えていくが、その変化を自覚的に 認識できる範囲はとても小さい。ところが、絵画には無意識の領域が色濃く現れてくる。そもそも私が取り憑かれたように花を描き続けているのも、意識内で説 明できる内容から大きくはみ出し、言葉に出来ない領域を、自分の内側に感じ続けているからに他ならない。20年前直感的に花を描き始め、その後、繰り返し 描き続けて、今や花は表現の起点に過ぎず、表現の目的ではなくなった。しかし私には花という入り口が絵画に到達する為に今でも必要なのだ。私の内的ビジョ ンの美的なエリアと絵画を結ぶ経路を、私は花を描く事により構築してきた。花を見つめ描く事で、内側に眠っていた様々なイメージが触発され、一つのビジョ ンに結実していく。そしてそれは、イメージの世界ではなく、画面 の中で絵画になる事により実現していくのだ。そのプロセスは常に極めて困難な作業であり、反面 そのおもしろさは何物にも代え難いものでもある。制作し、作品を発表していく積み重ねの中で、予想もしなかった多くの豊な体験を授かってもいる。そして私 はますます絵画に魅入られているのだ。

 私は、全く個人的な動機で、個人的イメージを絵画で表現し続けている。私にとって、絵画を制作する事は生きる事の中心に存在している。

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