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花弁が宇宙と身体のリズムを感じさせる
●小山利枝子の作品について

たに あらた

小山はたったひとつの花びらにこだわる。あるいはそれらが集合した花なるものにこだわる。しかし、それは花という存在を視覚的に定着しようという努力とは異なるだろう。つまり、客体的、具象的に存在させようとする努力とは違うのである。
むしろ、小山の対象にたいする凝視は、対象の存在感を超えようとするものだ。対象を擬視していく臨界点で彼女はそこに“宇宙”を見る。すなわち「花の形を 自分自身の身体のリズムに乗せるようにして、自分自身の身体より大きく拡大して紙の上に描いてゆく事を続けているうちに、花弁の輪郭線が、山の稜線に似て いることにある時気がついた」(『ETHOS』展カタログより抜粋、'90)。
まったく別な成立要因と存在形態をとりつつ、ほんのささやかな花びらの形態のなかに広大なスケ-ルの存在の形を類同視して呼び込むことは,すでにイマジ ネールな世界に没入している証拠だが、もうそのポジションからはコズミックなるものとの類同に距離はない。
さらに、その微なるものものから無限を臨む視点は、まったく同等の速度で自身の身体のリズムと呼応しようとしている。身体のリズムが感じられるような内燃 的で、流動的な筆致や形象、またそれらの生命感溢れる交合(コンストラクション)の方法は、小山独特の境位 をえていよう。
しかも、それらは、描かれた面の内部に凝縮していこうとするアングルは一切なく、画面 の外部に向かって解き放たれようとしている。
「コズミック・アイ」展パンフレット

「コズミック・アイ」展
1991年 3月25日~4月9日
Gallery ARIES<ギャラリー アリエス>



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