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京都新聞 展評


絵画では、長野県在住の小山利枝子が京都では三年ぶりの個展に大作を並べる。アクリル絵の具を使った画面 は、自然界の光り輝く大気の流れや宇宙的な気韻の生動感といったイリュージョンを覚えさせる。花を描き続けてきた、この作家の表現は今回、花弁の形や色彩 の具体的なイメージを超越して抽象化し、オーロラ絵画ともいうべき幻影のうねりを起こす。

1994年7月23日 京都新聞 展評欄「展評」

小山利枝子展
1994年7月19日~31日
ギャラリー16/京都



新旧こだわらず 我が道ゆく画風

朝日新聞夕刊 展評欄「美術」

スペースシャトルから見える地球の姿は、遠のけば小さく、近づけば大きくなる。ぐっと接近したときの大写 しには異様な迫力がある。小山利枝子の画面は花の大写しに、そんな超接近像の迫力を生かしている。31日まで、京都市ギャラリー16でアクリル画14点を展示中。月曜休み。
 形にも色にも、花びらの感触は残っている。しかしあまりにも接近し、しかも写 実的な描写を超えてしまったため、花の絵とは言い切れない作品ばかりだ。
 ダイナミックにうねり、流れてゆく紫や黄の転調、入り交じる光と影は、渦巻く水や気流の変化とも通 じ合う。現実の花の描写を突き抜け、その奥に脈打つ生命感を全身で感じとろうとした跡のようだ。どの画面 にも曲線ばかりしか見られず、直線は全くない。
 今春東京で評論家の高階秀爾氏らを中心に、現代絵画の新たな可能性を探るという推薦方式の企画展「VOCA展」が始まったとき、開場にあった小山の画風 は「現代アートらしく見せることにこだわらない」ことで少数派だったが、内容と技法が確かなことでは注目された。
 小山は、現代美術を志す人々が排除してきたイリュージョン(幻影)を、開き直って描いている。「20年近く前には自分も絵筆を捨ていろんな実験をしていたが、子供を育てているうちに花を描きたくなってから、素直に描いてきたのです。」と話す。
 新しいか古いかでなく、自然にわきあがってきた気持ちの通りに制作し、それが美術の現状を問い直すことにもなっている。

1994年7月23日 京都新聞 展評欄「展評」

小山利枝子展
1994年7月19日~31日
ギャラリー16/京都



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