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ダイナミック 快いリズム感

伊藤正大(美術ジャーナリスト)

 縦2m、横4.5mの画面いっばいに、巨大な花弁が描かれている。黄、緑、紫、赤など多彩 なアクリルの色調が、さわやかな自然の生気を発散させている。筆致はあくまでもダイナミック。少しの停滞もない筆の運びが、快いリズム感を生んでいる。
 作者の小山利枝子(無所属・長野市在住)は、十年来、花を描き続けている。それも葉も茎もない花の一部である。花の形を超えて、人間の生の光と影が塗り込められているようだ。
 東京芸大油絵科を卒業してしばらくは、多様な物体を使った抽象的なオブジェをつくっていた。
そのうち平面での絵画表現に独自の方向を見いだし「花の一瞬の美しさに自然の摂理が宿っているようだ」と、花を描き始めた。
 「最近、これからの作家活動に光が見えてきたような気がする」という。氏は今年から始まったVOCA(ヴオーカ)賞の候補四十二人の一人に堆薦された。 受賞は逃したが、今後の成長と活濯が大いに期待される。三十八歳。確かな手ごたえがうかがえる、出色の個展である。
1994年 信濃毎日新聞 展評欄「美」

小山利枝子展
1994年2月1日~6日
ギャラリー82/長野



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