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小山利枝子 一 光の風に誘われて

中村隆夫

  光の風は外側から巻き込むように画面の中心へと向い、彼方へと吹きぬける。その先にはすべてを内包する永遠の宇宙、神秘が拡がっている。私たちは風に乗っ てその拡がりへと誘われる。風のうねりは生命の律動感そのもの、そして馥郁たる花の芳香を運ぶ。自然界には直線は存在しないとガウディが言ったように、小 山利枝子さんの作品は美しい曲線であふれている。実はこの曲線、一輪のストックの花から得られたもので、彼女は常に現実の花の観察から出発する。デッサン を重ね、美しい曲線、生命のうねり、律動感を抽出し、そこに夕間暮れの赤や黄に染まった空の光が添えられる。

 彼女の作品は、心地よく私の魂を揺さぶる。単に曲線や色彩が美しいからではなく、作品中のフォルムが天空で生じては形を変えて行く、彩雲のごとき生命の 展開をも感じさせるからだ。以前の個展がそうだったように、小山利枝子さんの作品で囲まれた空間は生命の律動で美しく震え、私たちは清爽な風に包まれるに 相違ない。

 
小山利枝子展
2003年 6月30日〔月)~7月5日(土)
アートスペース羅針盤/東京



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